2018年12月09日

土浦

部屋を出たのは15時のことだった。路地にはほんのりと西日が射していて、昨日からの冷え込みがこたえた。薄々感づいてはいたが、この服装では夜はきついかもしれないと思った。
本当は午前中に出て、乗車3時間くらいの遠くに行きたかった。とくに今見たいわけでもなかったのだが、かつて海を見逃したことがあったから、今度こそ、との思いも多少あった。しかし10時過ぎに起きたことで少し予定を変更することにした。それでももう少し早く出られたとは思うが、まぁ、そんなものだろう。

この一週間ほどはまたバタバタしていた。加えて自分の怠慢から、自覚的に、問題を引き起こした。
そのせいで落ち着かない週末である。愚かしいことに、週明けが普段通りに憂鬱なだけではなく、怖い。このシナリオがわかっていながら、自ら選択のうえ過ごしてきたにもかかわらず、である。その恐怖自体はまだ解消できていない。

改札内の店をすこし物色すると、時刻は15時20分ほどになっていた。さてどこに向かったものかと思ったが、結局とりあえず常磐線に乗った。宇都宮や高崎を目指す手もあったが、せっかく日暮里だからと千葉や茨城をめざすことにした。
電車はさほど混んでおらず、中ほどの車両で座って人文書を開いた。なんとなく景色も見たい気がして外に目をやるが、ただでさえ咀嚼しづらい解説がちらちらしていっそう飲み込めない。北千住を出る頃にはうつらうつらしはじめたので、あきらめて眠ることにした。

恐怖のなかで、しかし私が希望を見出したのは、相手方にはおそらく不便はない点、そしてこのまま逃げてしまえばよいという点だった。自分に見切りをつけるちょうどよいきっかけになれば、痛みを伴うとしてもむしろ好ましい出来事である。
もちろん非常に不細工であり、不甲斐ない。意味の通らない自作自演ともいえ、面目なく恥ずかしいという思いはある。だがそうした思いよりも、この環境を厭う気持ちがはるかに強い。多少の傷を負ってでも出たいと願う。だいいち、私はもはや普通のことを普通に行うことができないのだ。立場から言っても、そうした者は去るべきであるはずなのだ。

電車は取手に着いた。改札内にはこれといって何もないことを確認し、さらに下りの電車に乗った。とはいえ水戸までは1時間以上あるので、土浦あたりを目指しておくことにした。
やがて西の平野に陽は沈み、山際がオレンジから黄色に、そして空も蒼くなりはじめた。いくつか駅を過ぎる頃にはほとんど暗くなり、景色も見えなくなってしまった。やはり日が短いなと改めて思った。

いままでの人生、とくにこの10年ほどを思い返してみて、人との縁をずいぶん蔑ろにしてきたものだと感じる。そういうつもりはもちろんなかったし、むしろ比較的大事にしようとしてきたはずだったのだが、振り返るとどこかで怠り、誤って、そのままにしてしまっていることが多い。
おそらく今回も、さまざまな人からの恩を仇で返すことになるのだろう。それが目に見えているのはいかにも辛いことだ。できるならば、次の10年はそういうことはないようにしたいし、できるならばいろんな人との縒りを戻していきたいとも思う。

土浦に着いてみると、そこは数年前に駅そばを食べ、チョコレートを買った駅だった。せっかく来たのだし、何か買おうかとも思ったが、そのまま折り返して上りのホームに向かった。上野行きは17時ちょうど発であった。




Posted by くりおか at 17:59│Comments(0)
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